光明歌壇 《2021年度》
福岡教化部の歌人達による歌の会、光明歌壇です。
※短歌を募集しています。日々の暮らしの中で感じたことや感動したことを文章にして送っていただいても結構です。
教化部(松尾)までお寄せ下さい。皆様のご投稿を心よりお待ちしております。
光明歌壇 《2022年3月》
光明歌壇大内マツノ・選
- 満月に向かいて「きぼう」の飛ぶという世界平和を我は願いぬ宮﨑 弘(福岡地区連)
- 出でくればウルフムーンを見上げつつ澄める光はわが町照らす稲葉 さつき(行橋東部地区連)
- 帰る家もはやなき身にて夕暮れは窓より偲ぶ父母居りし日々堀 ひろ子(下田川地区連)
- 麦の芽の大地に緑敷くごとく冬空の下輝き渡る陣山 充子(行橋東部地区連)
- 山茶花の花の終わる頃去りし友いつもピンクの服を着ていし木下 美恵子(行橋東部地区連)
光明歌壇 《2022年2月》
光明歌壇大内マツノ・選
- いでくれば師走の夕べほのかなる蝋梅の一輪ほころびていつ宮﨑弘(福岡地区連)
- ビニールの紐からみたる鳥の巣の姿見えぬは巣立ちたるらし稲葉さつき(行橋東部地区連)
- 千羽鶴待ちて高塚地蔵へといちょう古木の下歩み行く陣山充子(行橋東部地区連)
- 深雪の英彦山は久女の碑を埋め鳥も啼かずば訪れも無し堀ひろ子(下田川地区連)
- 「先生」と初めて呼ばれしそのときの戸惑いよああ四〇年前大内マツノ(新田原地区連)
光明歌壇 《2022年1月》
光明歌壇大内マツノ・選
- 苔まとい静かに佇むお地蔵に頭を下げて寺へ詣でる陣山 充子(行橋東部地区連)
- その母の水仙の島の生涯に句集を成して友出版す堀 ひろ子(下田川地区連)
- 秋物のタイムセールの鈴の音に人の後ろに吾も並びぬ中村 智子(勝山地区連)
- 手の平に金平糖を載せてくれし母思い出づ姫蔓蕎麦見れば木下 美恵子(行橋東部地区連)
- ビニールの袋が風に吹かれ来て我が足元にまつわりてゆけり宮﨑 弘(福岡地区連)
第二十九回ふくおか県民文化祭短歌大会にて《令和3年10月末》
※令和三年度行橋市民文化祭短歌大会にて、(令和3年度は紙上大会でした)稲葉さつきさん、陣山充子さんの二人が入賞致しました。おめでとうございます。
【大人の部 八十九首の中 互選賞三位 稲葉さつき、互選賞五位 陣山充子】
- 秀逸
店頭にひと笊のこる蜆貝めぐりは少し濡れ色残す大内 マツノ
- 入選
紫萁をかかげて走り寄る生徒「のの字のの字」と声弾ませり大内 マツノ
光明歌壇 《2021年12月》
光明歌壇大内マツノ・選
- 窓辺まで伸びてへちまは枯れ始むやがて我が家の束子にならむ宮﨑 弘(福岡地区連)
- 猫きたる埴輪の筆にとまどいの無くて太古の匂うがごとし堀 ひろ子(下田川地区連)
- 秋桜の群れ咲きいでてこの秋の垣根の上の風に吹かるる中村 智子(勝山地区連)
- 八十歳の兄に貰いし大輪の菊は今年も花をかかげつ稲葉 さつき(行橋東部地区連)
- 少しずつ耳も遠くになりたるが虫の鳴き声に今朝は目覚めつ木下 美恵子(行橋東部地区連)
光明歌壇 《2021年11月》
光明歌壇大内マツノ・選
- 畦道に赤く咲きいでし彼岸花お彼岸近し父母思いいづ木下 美恵子(行橋東部地区連)
- とうがんのスープ作らむとコロナ禍に新品の鍋を箱から出せり中村 智子(勝山地区連)
- 倒れいし鹿に水をば与うれば起きて振り向きながら去りゆく陣山 充子(行橋東部地区連)
- 水槽の底より尾ひれ震わせて浮き上がりくる緋目高のおり大内 マツノ(選者)
- 願わくば庭の草引くロボットを生んでください私のために大内 マツノ(選者)
光明歌壇 《2021年10月》
光明歌壇大内マツノ・選
- この腫れが引けば紅葉の園庭を我が足をもて歩いてみたし原 精子(東郷地区連)
- 山越えの車を止めればしみじみと逝く夏を鳴く蜩の声陣山 充子(行橋東部地区連)
- 両の手を合わせて坐る盆の日にろうそくの灯は風にあおらる中村 智子(勝山地区連)
- 樽の中に円く並べる梅干の一粒ひとつぶ色付きている木下 美恵子(行橋東部地区連)
- 裏庭の土筆を母と並びつつ摘みたる日々のなつかしきかな山田 敬子(築上地区連)
光明歌壇 《2021年9月》
光明歌壇大内マツノ・選
- 陶器市に友と来たりて青色の小さき花瓶をひとつずつ買う中村 智子(勝山地区連)
- 釦かけの手のまどろこしさ己が手も齢つもりてかくなりにけり堀 ひろ子(下田川地区連)
- リハビリに梅雨の晴れ間に散歩しぬ野の花が励ましくるるが如し木下 美恵子(行橋東部地区連)
- 石楠花の花郡思い山歩く求菩提の山の春の道の上陣山 充子(行橋東部地区連)
- 石段を登り来たれば山藤の紫の色こぼれていたり稲葉 さつき(行橋東部地区連)
光明歌壇 《2021年8月》
光明歌壇大内マツノ・選
- 神々の悦びの如し早朝に挨拶の声天地に満つる木戸 一(粕屋東武地区連)
- 代掻きの済みし水田を白鷺がゆっくり歩む梅雨の晴れ間を陣山 充子(行橋東部地区連)
- 梅雨時を白詰草の花咲きぬ水田の苗のそよぎはじめて中村 智子(勝山地区連)
- ベースメーカーも吾が一部なりつつがなく生命あずけて短歌を詠む日々堀 ひろ子(下田川地区連)
- 友くれし感謝と書きたる栞一葉美しき文字が形見となりぬ木下 美恵子(行橋東部地区連)
光明歌壇 《2021年7月》
光明歌壇大内マツノ・選
- 新しきスマートフォンにシルバーピンクの色輝けり原 精子(東郷地区連)
- 雨晴(あまば)れの山道登りゆく時に鶯の声幾度(いくたび)聞こゆ中村 智子(勝山地区連)
- 空高く舞いあがりたる鳶一羽夕日にむかい飛びゆくが見ゆ陣山 充子(行橋東部地区連)
- クローバーの四つ葉を見せに立ち寄りし友は散歩の土産と言いて木下 美恵子(行橋東部地区連)
- 木洩れ日のもるる山道歩みきて遠くに近くに囀(さえず)り聞こゆ稲葉 さつき(行橋東部地区連)
光明歌壇 《2021年6月》
光明歌壇大内マツノ・選
- ベッドから鏡に写る電線は音符のごとく鳥とまりゆく原 精子(東郷地区連)
- 雨あがり雫のこれる花房に日本みつばち数多(あまた)飛び交う稲葉 さつき(行橋東部地区連)
- 幾十年交(かわ)せる絵手紙会うことなく浅間のホームの音信途絶ゆ堀 ひろ子(下田川地区連)
- 庭草をむしりてしばし汗ばみぬ背中を吹ける風心地よし山田 敬子(築上地区連)
- 川の辺に光る数珠玉(じゅずだま)なつかしく散歩の道を回り路せり中村 智子(勝山地区連)
光明歌壇 《2021年5月》
光明歌壇大内マツノ・選
- 短歌詠まむと春日のホームに三本の鉛筆削る文具大切堀 ひろ子(下田川地区連)
- 頂きし叔母の形見の杖つきて桜並木を今年も歩む木下 美恵子(行橋東部地区連)
- いづくより訪ねきたりし花びらか近くに桜の木は見えぬども宮﨑 弘(福岡地区連)
- ベッドから起き上がるのも苦労にて衣服の着換えさらにむずかし原 精子(下田川地区連)
- 身寄りなき友へ別れの経を上ぐコロナ禍に逢えずひとり逝きたり稲葉 さつき(行橋東部地区連)
光明歌壇 《2021年4月》
光明歌壇大内マツノ・選
- いくばくか我の余生を支えくるるペースメーカー胸に抱きぬ堀 ひろ子(下田川地区連)
- リハビリに励めと友の縫いくれしバッグを肩に掛けて歩みぬ木下 美恵子(行橋東部地区連)
- 風のなき冬の晴れ間の散歩にて数珠玉光る道を歩めり中村 智子(勝山地区連)
- 足むくみて歩きづらさよ手を取りてともに歩みてくるる介護士原 精子(東郷地区連)
- 年の瀬に父母の墓に参りたり海青くまた空青かりき陣山 充子(行橋東部地区連)