少女時代にカトリックの修道会で伝統的な観想修行を長年続けた著者は、その間に神との合一を体験し、その後、世俗に戻って平凡な主婦としての生活を送っていました。ところが中年になって突然、自己の消滅が起こります。以前は神と合一しても、そのことを認識する自己は残っていました。しかし、その自己がなくなると、当然、認識の対象としての神も消えてしまいます。聖なるものと一体化した至福の意識状態は、実はゴールではなく、さらなる道なき道への入り口だったのです。
自己も神も見失った「魂の暗夜」とよばれる虚無の深淵を、著者はどのように生き抜き、その魂はどのように変容し、その果てにどのような境地にたどり着いたのか? 中世スペインの神秘家、十字架の聖ヨハネをガイドに綴られた稀有な魂の記録です。